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青く澄んだ空の下霞は高くも無ければ低くも無い声で
印を結びどこからとも無く現れた衣や簪を手に取り小さく苦笑を零す。
「…何百年ぶりかのこれに袖を通すのは」
記憶を辿りながら慣れた手つきで着物を着付けていき
先日切ったばかりの髪を纏め上げ青く透き通った硝子の簪を挿した。
そして池に映った自身の姿を見て思い出したように微笑む
「そういえば、この姿を彼奴は気に入っていたの…普段と違い凛々しい、と」
『霞、どんな貴方も私は好きだけど今日ほど貴方のことを凛々しいと思った日は無いわ』
『…それは、喜んでいいのかの?』
『うふふ、褒めてるんだから喜べばいいのよ』
『そうか、主が言うなら喜ぼう』
目を閉じればすぐに蘇える遠い昔の幸福だった日々
自分よりも小さく細い手を握りそっと彼女に呟いたあの言葉
『病める時も健やかなる時もいつまでも主を愛そう…どうかわしの傍に居ておくれ』
『ええ、いいわ。病める時も健やかなる時も貴方を愛し傍にいるわ』
そう無邪気に笑い人とも妖怪とも異なる姿の自分を
ありのままに愛してくれた愛しき人
そして全てを失ったあの惨劇の日
あれは嵐の日。
自分の腕の中で徐々に冷たくなっていく彼女の体
手に伝う生暖かい鮮血
頬を伝う水を「涙」だと教えてくれてのも彼女だった。
『霞、霞…もうお別れなのね』
『な、にを言う…まだじゃ、まだ別れなぞこぬ』
必死に流れ出る血を止めようとするわしの手を取り
いつものように微笑む姿を忘れられるものか
『いいの、いいのよ霞。私には分かってる。お別れなのよ』
『…っ』
『霞…どうか誰も憎まないで。これは神様が決めた事なのよ』
『…わしも…神じゃ…じゃがそんな事望んどらん!』
『いいえ…貴方は神様だけど違うのよ…私が最も愛したたった一人の人
ねぇ、霞…最期にもう一度…名前を…呼んで』
『ソ、ラ…?空!嫌じゃ、目を開けぬか!』
『霞…いままで有難う…貴方がくれたこの名前…とても好きだった』
『空…』
『(…さ、よ、う、な、ら)』
最後に残った青い石が埋め込まれている眼帯を付けると
霞は顔を上げ雲ひとつ無い空を見つめ
眩しそうに目を細めた。
「空、わしはもう一度この服を着るよ。主が言ったように誰も憎まぬように」
そう呟いた声に反応するかのように
優しく風が霞を撫でる。
「さて、あの子に会いに行ってみるかの。怖がられなければ良いのじゃが」
笑いながらゆっくりと歩き出した霞の背後に
優しく微笑む女性の姿があったそうな
FIN
やっと愛妻の名前が!
小説なんて久しぶりに書いたもんだから気恥ずかしい!
凛々しいっていうか怖いよね!逆に!
とか思いながら描いてました。(駄目じゃん
この衣装はヤツガシラ時代には着ていませんでした。
なのでこの格好を知っているのは空さんだけだったのですよ
とりあえず寝てない状態で文章を書くのは駄目だと実感しました。
あはは。
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